「商法」の始まりー通説への疑問

わが国では一般に、商法の歴史は中世の商人法に始まると考えられている。
野村修也 2026.05.27
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 これは、ゴールドシュミットの研究成果(Levin Goldschmidt, Handbuch des Handelsrechts, 3 Aufl.Bd.ⅠAbt.1 Lief.1 Universalgeschichite des Handelsrechts, 1891)を取り入れたものであり、今日に至るまで、特段の異論は見られない。まさに金字塔のように打ち立てられた通説である。

 しかし、一方で西洋経済史の一般的理解では、商業活動の起源は古代史に遡ると考えられている。だとすれば、古代にも商法と呼ぶに値するルールが存在していた可能性は高いとみるのがむしろ自然ではないだろうか。

 こうしたギャップが生まれた理由が商法の定義にあることは明らかである。すなわち、現代における商法の存在形態、すなわち民法から独立した商事法典という存在形態を商法の理念型と見て、その源流を過去に遡って探そうとする思考方法が、古代に商法は存在しなかったという命題を導いているわけだ。しかし、そこには啓蒙主義的な勝利者史観が見え隠れしていることも指摘できる。

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