「矛盾」と法治主義

楯と矛を売る商人が、「どんなものでもこの楯を突き抜くことはできない」と言い、他方で「この矛は、どんなものでも突き通せる」と言った。これを聞いて、ある人が尋ねた。「お前の矛で、お前の楯を突いたらどうなるか」と。
野村修也 2026.05.19
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 「矛盾」という言葉の語源となったこの寓話は、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。これは、春秋戦国時代の末期の思想家である韓非(子)(及びその弟子と後学の者)が書いた『韓非子』という書物に出てくる。

 韓非(子)は、春秋戦国時代に活躍した「諸子百家」と呼ばれる思想家の一人で、「法家」を集大成させた人物である。「法家」は、孔子に代表される「儒家」が徳による政治(徳治)を重視したのに対し、それを鋭く批判して法による政治(法治)を説いたことで知られる。

 「矛盾」の寓話が出てくる『韓非子』の難一篇には、その前後に、孔子が理想の君子と絶賛した古代中国の伝説上の聖天子「堯舜(ぎょうしゅん)」(堯と舜の二人の天子)に対する批判が書かれている。

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