50年目の新婚旅行(ショート・ショートを書いてみた⑫)
明日はいよいよ金婚式だ。元気に金婚式を迎えられる夫婦は、30パーセントに過ぎないと言われている。この日のために、妻に内緒で準備を進めて来た。
野村修也
2026.05.23
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新婚旅行を再現しようと思いついたのには、訳がある。新婚当時、お金の無かった僕たちにとっては、精一杯のハネムーンだった。旅先は、僕の実家に近い温泉街。お墓参りを兼ねた一泊二日の旅だった。
漆塗りのテーブルを挟んで、揃いの浴衣で向かい合った時、夫婦になった実感が湧いて来た。初めて食べた本格的な懐石料理は、地元の山菜と近くの川で釣った鮎が絶品だった。思い切って注文したシャンパンのフルボトル。ほんのりと赤らんだ妻の頬が愛らしく感じたのを覚えている。
夕食後、川辺に散歩に出た。妻の希望で、線香花火を買った。二人の人生が長く続くようにと祈りながら、火玉が落ちないよう息を飲む妻。その手を取って僕は、自分の火玉をくっつけて言った。